ンは、人を見真似に竈《かまど》に火を絶やさず炬火《かがりび》を扱う位の役に立つらしい。ダンテの友が猫に教えて夜食中|蝋燭《ろうそく》を捧げ侍坐せしむるに、生きた燭台となりて神妙に勤めた。因ってダンテに示して「教えて見よ、蝋燭立てぬ猫もなし、心からこそ身は賤《いや》しけれ」と誇るをダンテ心|悪《にく》く思い、一夕鼠を隠し持ち行きて食卓上に放つと、猫たちまち燭を投げ棄て、鼠を追い廻し、杯盤狼藉《はいばんろうぜき》と来たので、教育の方は持って生まれた根性を制し得ぬと知れと言うて帰ったと伝う。海狗《オットセイ》は四肢が鰭《ひれ》状となり陸を歩むに易《やす》からぬものだが、それすらロンドンの観場で鉄砲を放つのがあった。して見ると教えさえすれば猴も秉燭《へいしょく》はおろか中らずといえども遠からぬほどに発銃くらいはするなるべし。ただし『五雑俎』に明の名将威継光が数百の猴に鉄砲を打たせて倭寇《わこう》を殲《ほろぼ》したとか、三輪環君の『伝説の朝鮮』一七六頁が、楊鎬が猿の騎兵で日本勢を全敗せしめたなど見ゆるは全くの小説だ。それから前述のごとく、ベッチグリウ博士が、猴類は人に実用された事少しもなく、いま
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