十二支考
羊に関する民俗と伝説
南方熊楠

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)張り交《ま》ぜの

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紙|潰《つぶ》しな

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「轂」の「車」に代えて「角」、第4水準2−88−48]
−−

「張り交《ま》ぜの屏風《びょうぶ》ひつじの五目飯《ごもくめし》」てふ川柳がある。この米高また紙高の時節に羊に関する雑談などを筆するは真《ほん》に張り交ぜ屏風を造って羊に食わすほど紙|潰《つぶ》しな業《わざ》と思えど、既に六、七年続き来った『太陽』の十二獣談を今更中絶も如何《いかん》と、流行感冒の病み上りでふらつく頭脳で思い付き次第に書き出す。

 既に米高と言ったから、米高がかった話より初めよう。昔スウェーデン大凶年で饑飢免るべからずと知れた時、国民会議してすべての老人と病人を殺し、せめては少壮者を全く存せんと決したが、国王かかる残虐を行うに忍びず、念のために神慮を伺うた。神託宣していわ
次へ
全27ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング