っと羊で狗であるまいと対《こた》えたから桓子感服したとある。『韓詩外伝』には魯哀公井を穿たしむるに一生羊を得、公祝をしてこれを鼓舞して上天せしめんとしたが羊上天し能わず、孔子見て曰く水の精は玉、土の精は羊となる、この羊の肝は土だと、公それを殺して肝を視《み》れば土であったと出づというが、予の蔵本には見えぬ。虚譚のようだが全く所拠《よりどころ》なきにあらず、『旧唐書《くとうじょ》』に払菻国《ふつりんこく》に羊羔《ひつじのこ》ありて土中に生ず、その国人その萌芽《ほうが》を伺い垣を環《めぐ》らして外獣に食われぬ防ぎとす。しかるにその臍地に連なりこれを割《さ》けば死す、ただ人馬を走らせこれを駭《おどろ》かせば羔驚き鳴きて臍地と絶ちて水草を追い、一、二百疋の群を成すと出づ。これは支那で羔子《カオツェ》と俗称し、韃靼《だったん》の植物羔《ヴェジテーブル・ラム》とて昔欧州で珍重された奇薬で、地中に羊児自然と生じおり、狼好んでこれを食うに傷つけば血を出すなど言った。『古今要覧稿』に引いた『西使記』に、〈※[#「土へん+龍」、第3水準1−15−69]《ろう》種の羊西海に出《い》づ、羊の臍を以て土中に種《
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