きより、魚の頭と波頭棗《デート》の核を牛に飼うといい、マルコ・ポロの書には、アラビヤのユシェル国は世界中もっとも乾いた地で草木少しも生ぜず、しかるに三、四、五月の間、莫大に捕《と》れる至って小さい魚あり、これを乾し蓄えて年中|畜《けだもの》の食とすと見ゆ。それから推すと神馬草の伝説も啌《うそ》でなかろう。マルコ・ポロまたいわく、マーバールでは肉と煮米《にこめ》を炊《かし》いで食すから、馬が皆絶える、またいかな好《よ》い馬を将《も》ち来るも産まるる子は詰まらぬものばかり、さてこの地本来馬を産せず、アラビヤ辺の商人、毎年数千の馬をこの国へ輸入し法外に贏《もう》ける、しかるに一年|経《た》つ間に、多くは死んで百疋も残らず、これこの国人馬を養う方を知らず、外商これを奇貨とし、馬医この国に入るを禁ずるによると。これら外商はインドへ馬を輸《おく》って莫大に贏けたが、旨《うま》い事ばかりはないもので、随分危ない目にも逢った。例せばタナの王は海賊と棒組《ぼうぐみ》で、インド往きの船に多少の馬を積まぬはないから、馬さえ己に献ずれば他の積み荷は一切汝らに遣ると、結構な仰せに、海賊ども雀躍《こおどり》して外
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