んと思わば、出立前一日その馬に断食せしめまた水を少なく飲ます、しかすると一日に百五十マイル走り続け得と。滝川一益北条勢と戦い負けた時炎天ゆえ馬渇せしに、河水を飲ませて乗りしに走り僵《たお》れ、飲ませなんだ馬は命を全うしたというに似ている。して見ると我輩も飲まぬ方がよいかしらん。『神異経』に、〈大宛《だいえん》宛丘の良馬日に千里を行き、日中に至りて血を汗す〉とはいかがわしいが、チュクチー人など、シャーマーン(方士)となる修業至ってむつかしく、時として苦しみの余り、衄《はなぢ》や血の汗を出すという(チャプリカの『西伯利原住人《アボリジナル・サイベリア》』一七九―一八〇頁)。あるいはいわく、衄を塗りて血汗に擬するのだと。『本草綱目』に、馬|杜衡《かんあおい》を食えば善く走り、稲を食えば足重し、鼠糞食えば腹脹る、※[#「歹+僵のつくり」、第3水準1−86−40]蚕《きょうさん》と烏梅《うばい》で牙を拭《ぬぐ》わば食わず、桑葉を得ば解す、鼠狼《いたち》の皮を槽に置かば食わず、豬槽《ぶたぶね》を以て馬を飼い、石灰で馬槽を泥《ぬ》れば堕胎す、猴を厩に繋げば、馬の疲れを避くとある。しかるにトルコでは、
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