たので敵は逃げ散ってしまった。王大いに喜び諸臣に告《い》えらく、もし能く灌頂刹帝大王の命を救う者あらば何を酬《むく》うべきやと。諸臣さようの者には半国を与うべしと白《もう》す。ところが畜生に、国を遣っても仕方がないから智馬を施主として大いに施行し、七日の間人民どもの欲しい物を好みの任《まま》に与うべしと勅諚《ちょくじょう》で無遮《むしゃ》大会《だいえ》を催した。販馬商主これを見て、何の訳で大会を作《な》すやと問う。諸人答えて曰く、爾々《しかじか》の地である人が一の駒を瓦師に遣った、それが希代の智馬と知れて王一億金もて瓦師より買い取ると、今度果して王の命を活かし、その謝恩のための大会じゃと。商主聞きおわって、どうやら自分が瓦師に遣った駒の事らしく思い、王の厩へ往きて見れば果してしかり。智馬商主に向い、貴公が遥々《はるばる》将《つ》れて来た馬五百疋がいかほどに売れたか、我は一身を一億金に売って瓦師に報じたという。さては大変な馬成金に成り損《そこ》なったと落胆の余り気絶する。その面へ水を灑《そそ》いでやっと蘇《よみがえ》り、何と悔いても跡の祭と諦め、これというもわれ尊公を智馬と知らず悪《にく
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