、野老《ところ》に香を合せ大きな筆管を通して大便に擬しあったので、その用意の細かに感じ、いかでかこの人に会わずしてはやみなんと思い迷うて焦《こが》れ死んだと見ゆ。以て以前邦人が香の嗜み格別で、今日|雪隠《せっちん》へ往って手を洗わなんだり、朝起きて顔を洗わずコーヒーを口に含んで、歯垢《はくそ》を嗽《すす》ぎ落して飲んでしまう西洋人と、大違いたるを知るべし。
 ただし最《いと》古く香の知識の発達したはまずアジア大陸諸国で、支那の『神農本草』既に香剤を収めた事多く、『詩経』『離騒』に芳草しばしば見え、返魂《はんごん》招仙に名香を焼《た》く記事を絶えず。一七八一年ビルマに滅ぼされた旧帝国アラカンの盛時、国中に十二殿ありて、十二町に散在す。各町の知事毎年その町良家新産の女児を視《み》て最も美な者十二人を選び、殿中に養い歌舞を習わせ、十二歳の始めにこれを王宮に進め、旧制に従《よ》って試験を受く。まず娘どもを浴《ゆあみ》させ新鮮潔白な絹衣を着せ、高壇に上って早朝より日中まで立たしむると、熱国の強日に曝《さら》され汗が絹衣に徹《とお》る。一々それを新衣に更《か》えしめ、汗に沾《うるお》うた絹衣を収め
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