63]庭《いんてい》雑録』にも見える。次に岸本由豆流《きしもとゆずる》が件《くだん》の文の「何の葦影に託けて」の何は河の誤写と発明したので、いよいよ意味が明らかになった。全く貫之朝臣が男もすなる日記てふ物を女もして見せるとて、始終女の心になりて可笑味《おかしみ》を叙《の》べたもの故、ここも水|渉《わた》るため脛《はぎ》高く掲げしかば、心にもあらで、ホヤの妻ともいうべき貽貝や鰒様の姿を、葦の影の間に映し見せたてふ、女相応の滑稽と判った(『しりうこと』第五)。また昔子を欲する邦人が渇望した肉※[#「くさかんむり/從」、第4水準2−86−64]蓉《にくじゅうよう》は、『五雑俎』十一に、群馬の〈精滴地に入りて生ず、皮松鱗のごとし、その形柔潤肉のごとし、云々、この物一たび陰気を得ば、いよいよ壮盛加わる、これを採り薬に入れ、あるいは粥を作りこれを啖えば、人をして子あらしむるという〉、また健補の功それよりも百倍すてふ鎖陽は、野馬あるいは蛟竜遺精より生じ、同前の伝説ある由『本草綱目』に出《い》づ。肉※[#「くさかんむり/從」、第4水準2−86−64]蓉は邦産なく従来富士日光諸山のサムタケを当て来り、金
前へ 次へ
全212ページ中168ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング