かんとこれに鞍付くるうち騾が彼を蹴った。その罰で永世騾はその父母子孫なく馬驢の間に生まれて一代で果て、また人に嫌われて他の諸畜ごとく主人の炉辺に近づけくれず、驢は『聖書』に不潔物とされ居るが馬がなかった世に専ら使い重んぜられ、古く驢と牛を※[#「耒+禺」、第3水準1−90−38]《あわ》せ耕すを禁じ(驢が力負けして疲れ弱りまた角で突かれる故)、モセスの制に七日目ごとに驢牛を息《やす》ますべしとあると。
 いわゆる騎馬の始祖ベレロフォンは、本名ヒポノイース、ギリシアのコリントの産、同郷人ベレロスを殺してベレロフォン(ベレロス殺し)と呼ばる。その事で生所を立ち退きチーリンスのプレツスに寄るうち、プの妻アンテアその若くて美なるに惚れ込み、しばしばヤイノを極《きわ》むれども聴かざるを怨み、かえってベが自分に横恋慕すと夫に讒す。プレツス怒りてその舅ヨバテースに宛てて隠語もてベを殺しくれるようの依頼状を認《したた》め、ベに持たせてヨに遣わす。ヨこれを読んで委細承知し、ベを自滅せしむべく往きてキメーラを討たしむ。それは獅の首山羊の胴蛇の尾で火を吐く鵺《ぬえ》同然の怪物だ。これより先地中海の大神ポセイ
前へ 次へ
全212ページ中142ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング