ず、氈を以てこれを裹《つつ》めば数日内に毛生ず、三歳に至らざるに、大宛馬《だいえんば》とほぼ同じ〉。また三二二巻に、広西の竜馬|窩《か》旧伝に、烟霧中怪しき物ありて、馬を逐《お》い走る事飛ぶがごとし、後駒を生むに善く走ると。
 これらをすべて攷《かんが》うると、最初牧馬と野馬と判然分立せざる時、もしくは牧馬がしばしば逃れて野生に復《かえ》った時、湖中の島や遠く水を隔たった地などに自活しいたが、時に水を渡って牧馬に通い、生まるるところの駒が著しく良かったのを、海※[#「馬+聰のつくり」、第4水準2−93−3]、海馬、竜駒などいったのだろう。野馬は人を厭う故に容易に人に見られず。形を見せぬ物が牧馬を孕ます故、竜てふ霊怪な物の子としたので、竜の居そうな所に野馬が棲んだのだ。古く八尺以上の馬を竜と呼んだも、かようの辺《あたり》から起ったらしい。熊野で、他所と懸絶した地点の小家の牝猫が、近所に一疋も牡なきに孕むを、これは交会の結果でなく、箒《ほうき》で撫《な》でれば牡なしに子を儲《もう》けるなど信じいる人を見た。実は人に取ってこそ他所と懸絶なれ、偶を求む牝猫は其式《それしき》の崖や渓を何《にゃん
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