ち頭に近く二前脚ありとは全く誤聞だが、ここに件《くだん》の大蛇が※[#「虫+冉」、227−8]蛇すなわちピゾン・レチクラツスたる最も有力な証拠はすべて蛇類は比較的新しき地質紀に蜥蜴類が漸次四脚を失うて化成した物で、精確にこれまでが蜥蜴類これからが蛇と別つ事はならぬ。されば過去世のピゾノモルファ(擬蟒蛇《うわばみもどき》)など体長きこと蟒蛇に逼《せま》りながら確かに肢を具えていた。さて※[#「虫+冉」、227−11]蛇《ボイダエ》群の蛇はおよそ六十種あり、熱帯アメリカのボアやアナコンダ、それから眼前予の論題たる※[#「虫+冉」、227−12]蛇《ピゾン》、いずれも横綱|著《つき》の大蛇がその内にある。知人英学士会員プーランゼーは、※[#「虫+冉」、227−13]蛇《ボイダエ》群は蛇のもっとも原始な性質を保存すと言った。その訳はこの一群の諸蛇蜥蜴を離るる事極めて遠からず、腰骨と後足の痕《あと》をいささかながら留めおり、すなわち後足の代りに何の役にも立たぬ爪二つ相対して腹下にある。これ正しくマルコが鷹また獅の爪ごとき爪が後足を表わすといえるに合い、南詔国(現時雲南省とシャン国の一部)辺に※[
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