拷椋《ごうりゃく》百数といえどもついに死せず、ただし性大寒にして能く陽道を萎せしめ人をして子なからしむ〉。ランドの『安南風俗迷信記』にこの蛇土名コン・トラン、その脂を塗れば鬚生ずとあれば漢医がこれを大寒性とせるは理あり、『※[#「土へん+卑」、第3水準1−15−49]雅』には〈※[#「虫+冉」、227−3]蛇の脂人骨に著《つ》くればすなわち軟らかなり〉。さてマルコの書をユールが注して、これは※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《がく》の事だろう、イタリアのマッチオリは※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の胆が小|瘡《かさ》や眼腫に無比の良薬だといったと言うたは甚だ物足らぬ。両《ふたつ》ながら胆が薬用さるるからマルコの大蛇と※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]と同物だとは、不埒《ふらち》な論法なる上何種の※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]にもマルコが記したごとき変な肢がない。予|謂《おも》うにマルコはこの事を人伝《ひとづて》に聞書《ききがき》した故多少の間違いは免れぬ。すなわ
前へ 次へ
全137ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング