出て食を覓《もと》め、また河や湖泉に行き水を飲む、その身重き故行くごとに尾のために地|凹《くぼ》む事大樽に酒を詰めて挽《ひ》きずりしごとし、この蛇往還必ず一途に由る故、猟師その跡に深く杭《くい》を打ち込み、その頂に鋭き鋼《はがね》の刃|剃刀《かみそり》様なるを植え、沙《すな》もて覆うて見えざらしむ。かかる杭と刃物を蛇跡へ幾つも設け置いたと知らないかの蛇は、走る力が速ければ刃の当りも強くしてやにわに落命してしまう、烏これを見て鳴くと、猟師が聞き付け走り来ると果して蛇が死んでおり、その胆を取りて高価に售《う》る。狂犬に咬まれた者少しく服《の》まば即座に治る、また難産や疥癬に神効あり、その肉また甘《うま》ければ人好んで購《あがな》い食う」と言った。『淮南子《えなんじ》』に、越人※[#「虫+冉」、226−14]蛇を得て上《よき》肴《さかな》となせど中国人は棄て用いるなし。『嶺表録異』に、晋安州で※[#「虫+冉」、226−15]蛇を養い胆を取りて上貢としたと載せ、『五雑俎』に、〈※[#「虫+冉」、226−16]蛇大にして能く鹿を呑む、その胆一粟を口に※[#「口+禽」、226−16]《ふく》めば、
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