#「虫+冉」、228−1]蛇(ピゾン・レチクラツス)のほか大蛇体でかかる爪もて後足を表わすものなければ、マルコは多少の誤りはあるとも※[#「虫+冉」、228−2]蛇を記載した事疑いを容れず、予往年ロンドンに之《ゆ》きし時、この事をユールに報ぜんとダグラス男に頼むと、ユールは五年前に死んだと聞いて今まで黙りいたが、折角の聞を潰《つぶ》してしまうは惜しいから今となっては遼東の豕かも知れぬが筆し置く、この※[#「虫+冉」、228−5]蛇もまた竜に二足のみあるてふ説の一因であろう。
 英語でサーペントもスネイクも、蛇とは誰も知り居るが、時にサーペント|および《エンド》スネイクと書いた文に遭《あ》う。その時は前者は人に害を加うる力ある蝮また蟒蛇等でその余平凡な蛇が後者だ。ヴァイパーとは上顎骨甚だ短く大毒牙を戴いたまま動かし得る蛇どもで、和漢の蝮もこれに属するからまず蝮と訳するほかなかろう。それからアスプといってエジプトの美女皇クレオパトラが敵に降らばその凱旋《がいせん》行列に引き歩かさるべきを恥じこの蛇に咬まれて自殺したとある。これはアフリカ諸方に多いハジ蛇なりという。これは既述竜の話中に図に出
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