図[#図省略])。竜蛇が如意《にょい》宝珠《ほうしゅ》を持つてふ仏説は、竜の条に述べた。インドのコンカン地方で現時如意珠というは、単に蛇の頭にある白石で、これを取ればその蛇死す。蛇に咬まれた時これをその創《きず》に当つれば、たちまち毒を吸って緑色となるを、乳汁に投ずれば毒を吐いて白色に復《かえ》り乳は緑染す。かように幾度も繰り返し用い得という。またいわく、老蛇体に長毛あるは、その頭に玉あり、その色虹を紿《あざむ》く、その蛇夜これを取り出し、道を照らして食を覓《もと》む。深い藪中に棲み人家に近づかず、神の下属《てした》なれば神蛇《デブア・サールバ》と名づく。サウシの『随得手録《コンモンプレース・ブック》』二に、衆蛇に咬まれぬよう皮に身を裹《つつ》み、蛇王に近づき撻《う》ち殺してその玉を獲たインド人の譚《はなし》あり。
 エストニアの俚談にいわく、ある若者奇術を好み、鳥語を解したが、一層進んで夜中の秘密を明らめんと方士に切願した。方士その思い止まるが宜《よろ》しかろうと諫《いさ》めたれど聞き入れぬから、そんならマルク尊者の縁日の夜が近付き居る、当夜蛇王が七年目ごとの例で、某処で蛇どもの集会
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