号竜の話の末文に大分メートル高く約束をしたから、今更黙ってもおれず、ざっと次のごとく事項を分け列ねた各題目の下に蛇についての諸国の民俗と伝説の一斑《いっぱん》を書き集めよう、竜の話に出た事なるべくまた言わぬ故|双《ふたつ》参《あわ》せて欲しい。
名義
本居宣長いわく、「『古事記』の遠呂智《おろち》は『書紀』に大蛇とあり、『和名抄』に蛇和名|倍美《へみ》一名|久知奈波《くちなわ》、『日本紀私記』にいふ乎呂知《おろち》とあり、今俗には小さく尋常なるを久知奈波といひ、やや大なるを幣毘《へび》といふ、なほ大なるを宇波婆美《うわばみ》といひ、極めて大なるを蛇《じゃ》といふなり、遠呂智とは俗に蛇といふばかりなるをぞいひけむ云々」。またいわく、「『和名抄』に蛇和名倍美|※[#「虫+元」、224−5]蛇《げんじゃ》加良須倍美《からすへみ》※[#「虫+冉」、224−6]蛇《ぜんじゃ》仁之木倍美《にしきへみ》とありて幣美《へみ》てふ[#「てふ」に「〔という〕」の注記]名ぞ主《むね》と聞ゆる、同じ『和名抄』蝮の条に、〈俗あるいは蛇を呼ぶに反鼻と為す、その音|片尾《へんび》〉といへるは和名倍美
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