果して相師の言のごとく、妙光女死すといえども、余骸なお五百人に通じ、五百金銭を獲たと。妙光死して天竺の北なる毘怛吐泉《びたとせん》の竜となり、五百牡竜来って共に常にこれに通じた。世尊諸|比丘《びく》に向いその因縁を説きたまわく、昔|迦葉仏《かしょうぶつ》入滅せるを諸人火葬し、舎利《しゃり》を収め塔を立てた時、居士女《こじのじょ》極めて渇仰して明鏡を塔の相輪中に繋《つな》ぎ、願わくはこの功徳もて後身世々わがある所の室処《へや》光明照耀日光のごとく、身に随《つ》れて出ん事をと念じた。その女の後身が妙光女で、願の趣聞き届けられて、居所室内明照日光のごとくだった。かく赫耀《かがやき》ながら幾度も転生《うまれかわ》る中、梵授王の世に、婆羅尼斯城の婬女に生まれ賢善と名づけ、顔容端正人の見るを楽《よろこ》ぶ。ところで予《かね》て王の舅《しゅうと》と交通した。ある時五百の牧牛人《うしかい》芳園で宴会し、何とよほど面白いが、少女の共に交歓すべきを欠くは残念だ、一人呼んで来るが好《い》い、誰が宜《よか》ろうと言うと、皆賢善女賛成と一決し、呼びに行くと、かの婬女金銭千文くれりゃ行こう、くれずば往かぬというた
前へ
次へ
全155ページ中47ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング