しば言った通り、今一つ竜なる想像動物の根本たりしは※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]で、これは従前蜥蜴群の一区としたが、研究の結果今は蜥蜴より高等な爬虫の一群と学者は見る。現在する※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]群が六属十七種あって、東西半球の熱地と亜熱地に生ず。インドに三種、支那の南部と揚子江に各一種あり、古エジプトや今のインドで※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]を神とし崇拝するは誰も知るところで、以前は人牲を供えた。近時も西アフリカのボンニ地方や、セレベス、ブトン、ルソン諸島民は専ら※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]を神とし、音楽しながらその棲《すみか》に行き餌と烟草を献《たてまつ》った。セレベスとブトンでは、これを家に飼って崇敬した。アフリカの黒人も※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]家近く棲むを吉兆として懼れず(シュルツェ著『フェチシスムス』五章六段)。バンカ島のマレー人は※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の夢を吉とし婦人に洩らさず(エップ説)。マダガスカルの一部には※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]を古酋長の化身とし、セネガル河辺では※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]物を取れば祝宴を開く(シュルツェ同上)。フィリッピンのタガロ人は※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]に殺された者、雷死刃死の輩と同じく虹の宮殿に住むとした(コムベス著『ミンダナオおよびヨロ史』一八九七年マドリッド版六四頁)。ソロモン諸島人は※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]が餌を捉うるに巧智極まる故、人のほかに魂あるは※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]のみと信ず(一九一〇年版ブラウン著『メラネシアンスおよびポリネシアンス』二〇九頁)。下《ラワル》ニゲリア人は※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]は犯罪ある者にあらずんば食わずとてこれをその祖先神または河湖神とし、殺さばその住《とど》まる水|涸《か》ると信じ、また※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ
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