hの条に「今日主として虎が棲《す》むはヒマラヤ山麓で熱病常に行《はや》るタライ地帯と、人が住み能わぬ恒河三角島《ガンゼネク・デルタ》の沼沢と、中央高原の藪榛《そうしん》とで、好んで鹿|羚《アンテロプ》野猪を食い、この諸獣多き時は家畜を犯さず、農作を害する諸野獣を除きくれるから土民は虎を幾らかその守護者と仰ぐ」とある、白井博士は虫蛇|禽獣《きんじゅう》とて一概に排斥すべきにあらず、狐を神獣とし蛇を神虫として殺さざるは、古人が有益動物を保護して田圃《たんぼ》の有害動物を駆除する自然の妙用を知り、これを世人に励行せしむる手段とせしものにて決して迷信に起源せしものにあらずと言われた(明治四十四年十一月一日『日本及日本人』五頁)。現に紀州では神社|合祀《ごうし》を濫行し神林を伐り尽くして有益鳥類|栖《す》を失い、ために害虫|夥《おびただ》しく田畑に衍《はびこ》り、霞網などを大枚出して買い入れ雀を捕えしむるに、一、二度は八百疋捉えたの千疋取れたのと誇大の報告を聞いたが、雀の方がよほど県郡の知事や俗吏より慧《さと》くたちまち散兵線を張って食い荒らし居る、それと同時に英国では鳥類保護の声|殷《さか》ん
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