コで七日まで待ち通した、八日目に草臥《くたびれ》て虎も昼寝するを見澄まし、ファッツ徐々《そろそろ》下りる音に眼を寤《さま》して飛び懸る、この時|晩《おそ》しかの時早くファッツが戦慄《ふるえ》て落した懐剣が虎の口に入って虎を殺した、怪我の高名と心付かぬ王は武勇なる者まさに笏?フ女に配すべしとて、艶色桃花のごとき妙齢の姫君を由緒|不知《しれず》のかの小男の妻に賜ったという。蕭斉訳『百喩経』に同じ話の異態を載す、昔一婦淫乱で夫を嫌い方便して殺さんとする際、君命に依って夫隣邦に使いす、妻五百の歓喜丸に毒を入れ夫に与え道中で食えという、夫旅立ちていまだ食わず夜に入り露宿すとて、猛獣を畏《おそ》れ丸を樹下に置き自ら樹上に宿す、その夜五百賊王の馬五百疋と種々の宝を盗んで樹下に来り、飢えを救わんとて各一丸ずつ食い中毒して皆死す、翌朝使人樹より下り賊の兵器もて群賊の尸に傷つけ、五百馬と宝を収め隣国王に面し、われ君のために群賊を鏖《みなごろし》にし盗まれた品ことごとく返上すと啓《もう》す、王人をして検せしむると群賊皆傷つき死せり、王大いに感じ使人に封邑を賜い重用す、王の旧臣皆この男を妬み遠方から素性の知れ
前へ
次へ
全132ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング