「た。かく不埒《ふらち》千万な野干も七日不食十善を念じ兜率天《とそつてん》に生まれたと『未曾有経』に出づ。ラッツェルの『人類史』にアフリカのチップー人は野干に則って外人の所有物を自分らの共有財産と做《な》し掠め取るとある。
仏教国に虎を入れた滑稽談も数ある、その内一つ出そう。クラウストンの『俗話小説の移化《テールス・エンド・ポピュラル・フィクションス》』一に引いたカシュミル国の譚に織工ファッツ一日|杼《ひ》を一たび投げて蚊七疋殺し武芸無双と誇って、杼と手荷物と餅一つ裹《つつ》んだ手巾を持って武者修行に出で、ある都に到ると大悪象が日々一人ずつ食う、勇士出征するも皆生き還るを得ぬ、ファッツ聴きて我一たび杼を投げて七つの蚊を平らげた腕前で、この象一疋|殪《たお》すは児戯に等しと合点し、単身往きてかの象を誅せんと国王に申し出た、王これは狂人だろうと思うて制すれど聞き入れぬから、しからば勝手にせよと勅命あり、象出で来るに及びかの小男槍か弓矢を帯びよと人々の勧めを却《しりぞ》け、年来|試《ため》し置いた杼の腕前を静かに見よと広言吐いて立ち向う、都下の人民皆城壁に登りてこれを見る、いよいよ悪象ファ
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