ト瓜姫の織りたる機の腰に天《あま》の探女《じゃく》が乗りたりけりと聞えければ、夫婦怪しと思いて一間の内に入りて見るに、天の探女姫を縄にて縛りたり、夫婦驚きてこれを援け天の探女を縛り、此女《こやつ》薄《すすき》の葉にて鋸《ひ》かんとて薄の葉にて鋸きて切り殺しぬ、薄の葉の本に赤く色附きたるはその血痕なりという物語田舎には今も語れり、信濃人の語るを聞きし事あり」と信節の説だ。出雲に行わるるところは大分これと異《ちが》い爺と媼と姫を鎮守祠に詣らせんとて、駕籠《かご》買いに出た跡に天探女《あまのじゃく》来り、姫を欺き裏の畑へ連れ行きその衣服を剥ぎ姫を柿の木に縛り、自ら姫の衣服を着て爺媼が買うて来た駕籠に乗り祠に詣らんとする時木に縛られた姫泣く、爺媼|欺《だま》されたと感付き天探女の首を鎌で打ち落し裏の黍畑に棄てた、その血で黍の色赤くなったという。前の咄《はなし》に薄の葉で鋸き殺すとあるに似た例、『西域記』十に竜猛菩薩|※薩羅国[#「※」は「りっしんべん+喬」、47−14]《こさらこく》の引正王に敬われ長寿の薬を与えたので王数百歳経ても死なず、多くの子孫がお先へ失礼するを見て王妃がその穉子に説いて
前へ 次へ
全132ページ中64ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング