を顕揚せんと一弟子を波羅奈国に遣わし輔相に謀り会資として珍宝を得んとす、その弟子中道で人が仏の無量の徳行を説くを聞きて仏に趣く途中虎に食われ、善心の報いで天に生まる、旧師波婆利慈氏のために大会を催すところへ悪|波羅門《ばらもん》押し懸けて詛《のろ》い波婆利大いに困る、ところへ虎に食われた弟子天よ闕~り殃《わざわい》を脱れんとならば仏に詣《まい》れと教え一同を仏教に化した、話が長いから詳しくここに述べ得ぬ。『経律異相』四五には牧牛児あり常に沙門の経|誦《よ》むを歓び聞く、山に入りて虎に食われ長者の家に生まる、懐姙中その母能く経を誦む、父この子の所為《しわざ》と知らず鬼病《もののけ》と為《おも》う、その子の前生に経を聞かせた僧往きて訳を話しその子生れて七歳道法ことごとく備わった大知識となったとある。支那には虎に食われたのを知らずに天に上ったと思っていた話がある。『類函』に『伝異志』を引いて唐の天宝中河南|※氏[#「※」は「いとへん+侯」、37−8]《こうし》県仙鶴観毎年九月二日の夜道士一人天に登るといって戸を締む、県令張竭忠これを疑いその日二勇者に兵器を以て潜み窺わしむ、三更後一黒虎観に入
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