Eスチヴンス説にセマン人は以前|黒焦《くろこげ》にせる棒一本を毒蛇また虎の尸の上もしくは口の前に置き、あるいは木炭もて虎の条紋に触れ、冥途《めいど》で虎の魂が人の魂に近づくを予防す。ただし虎も蛇も時に地獄悪人の魂を驚かすと信ぜらると、仏経にも禁戒具足しいまだかつて行欲せざる浄行童女善比丘尼を犯し破戒せしめた者、死して大焦熱大地獄に堕《お》ちる。臨終に男根縮んで糞門に入り、大苦悩し、最後に他世相《あのよのそう》を見る。たとえば悪色不可愛、一切猛悪ことごとく具《そな》われる獅虎等を見、悪虎の声を聞き大恐怖を生ず。また妄語して他人を罰せしめ愉快と心得た奴は、死して大叫喚地獄の双N悩部に落ち、※牙[#「※」は「陷のこざとへんを取ったもの+炎」、73−12]《えんが》獅子に食われ死して活きまた食わるる事千百歳、この獅の歯の中に※火[#「※」は「陷のこざとへんを取ったもの+炎」、73−13]充満し、噛《か》めば焼く痛さと熱さの二苦を受くるのだ、この他|豺狼《さいろう》地獄、銅狗、鉄鳥など種々罪人を苦しむる動物がある(『正法念処経』十および十一、『経律異相』四九)。エジプトの古宗教にはその国に産せぬ
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