は、近所の家に手伝いにいって食べさせてもらっていました。しかし、この村はどの家も、どの家もまったく貧《まず》しい暮《くら》しをしているので、どこでも清造ひとりを余計《よけい》に養《やしな》っておけるような家はなかったのです。
「おめえのような人間は、いまのうちに東京さいって、なにかしたらいいだ。気だても素直《すなお》だから、どこさでもおいてくれべえ。こんな村に子どもひとりして暮していたってしようがない。早くいくがいいよ。」
秋の刈入《かりい》れがすんで、手伝《てつだ》い仕事がなくなると、村のひとたちはだれも清造にこういうのでした。清造はそれを聞くと悲《かな》しくなって、沼のふちへ来て泣《な》いていました。そうして今度《こんど》は、石を二度、沼の中に投げこみました。ゆっくりと間を置いて、はじめのあわが消《き》えてしまうと、また投げるのです。そのあわをじっと見てると、死んでいった父と母が、あわの中からなにかささやくように思われました。
清造が毎日、沼のふちに来てぼんやりして暮《くら》しているので、村の人もとうとうかまわなくなりました。食べられなくなった清造は、ついに村を出なければならな
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