くなったのです。そうしてかれは、道を歩いて疲《つか》れてくると、横になって目をつぶりました。さびしい沼が、ふと浮かんで、ふたつのあわが浮かんで消えるのがはっきり見えました。それを見ると、かれはふしぎに元気《げんき》を回復《かいふく》するのでした。

     二

 お昼《ひる》ちかくまで、清造は、長い町を歩きました。町はずれのむこうの方に、汽車《きしゃ》の通る土手の見えるへんまでくると、その町は少しさびれてきました。清造はぺこぺこにへったお腹《なか》をかかえて、もう目がまわりそうにだるいのをこらえながら歩いてくると、ふと道の片側《かたがわ》に、いろいろな絵《え》のかかっている店がありました。それは正月を目の前にひかえて、せわしくなった凧屋《たこや》でした。凧屋の主人は、店の中にひとりすわってはり[#「はり」に傍点]上げた凧に糸目《いとめ》をつけたり、骨組《ほねぐみ》をなおしたりして働いていました。
 清造はもう疲《つか》れきってしまったので、凧屋の前に立って、凧の絵を見るようにして休んでいました。ろう[#「ろう」に傍点]をぬったひげだるま[#「ひげだるま」に傍点]の目は、むこうの隅《
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