《か》れてかさなりあっているところや、青黒い水が、どんよりと深くよどんでいるような場所《ばしょ》がありました。水鳥がむれて泳《およ》いでいる時も、あめんぼが勢いよく走っている時もありました。しかし清造には、この沼《ぬま》のあたりが、一番しずかでだれにもいじめられずに遊んでいられる場所だったのです。
 清造はさびしくなると立ちよって、沼に石を投《な》げこみました。すると、やがて大きなあわがひとつぽっくりと浮《う》かんで、ぽっと消えると、後からまた、小さなあわが、ぶくぶくと、たくさん浮かんできます。これはなんだか、沼が清造に話をでもするように思われました。だから清造は、沼のふちに遊びにきて帰る時には、かならず石を一つ投げこんであわがすっかり浮かびきるまでながめてから、自分《じぶん》の家に帰るのでした。
 ことしの夏、この山奥の小さな村に悪い病気がはやった時、清造の両親《りょうしん》は一時《いちじ》に病気のためになくなりました。まだやっと十三になったばかりの清造は、悲しみとさびしさの中にとほうにくれてしまいました。
 秋になって、百姓仕事《ひゃくしょうしごと》が、少しせわしくなってから、清造
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