造にはなんの興味《きょうみ》もありません。金物屋《かなものや》や桶屋《おけや》はそれ以上に用のないものでした。といって、あのうまそうなおかしだの、にしめだののならべてある店の前に立つと、ただ苦《くる》しくなってくるばかりです。
「どこにもおれには用はねえだ。」かれはそう思うと、このにぎやかな町が、にわかにさびしいものになってしまったように感じました。そうして、きのうまで歩いて来た、林だの畑ばかりつづいたいなか道が、かえって恋《こい》しくなってきました。そこでもかれはむろん、うえ疲《つか》れて歩いていました。しかし、お腹《なか》がへって、からだが疲《つか》れてふらふらしてくると、清造はどこか道ばたの木の根でも、お堂《どう》の縁《えん》にでも腰をおろして、ごろりと横になるのでした。そうしてふと目をつぶると、頭の中がしいんとして、いつも同じように、自分がいままで遊んでいた、村のはずれにある、あの大きな沼《ぬま》が目の前に浮《う》かんできました。
 清造はそのふるびたさびしい沼のふちに、たったひとりで遊んでいました。沼にはあし[#「あし」に傍点]やよし[#「よし」に傍点]の黄色い茎《くき》が枯
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