ふのである。第一と第三とは、共に第二の樣に動的でなくして靜的であるといふ點に於ては同一であるけれども、前者は苦或は苦の對象其物には毫も美や、樂や、意義を認めぬのである。後者は、苦若くは苦の對象其物に、美や、樂や、意義を認むるのである。であるから、前者の樂は消極的であつて、後者の樂は積極的である。又、第二と第三とは、第一の樣に受動的でなく服從的でないといふ點に於ては一致して居るけれども、前者は排他的の態度を以て苦に對し、後者は包容的の態度を以て之に對するのである。前者は苦に對して戰鬪の姿勢を取り、後者は之に對して平和の姿勢を取る。而かも其平和は决して第一の樣に服從的の平和ではない。
 勿論、此三者は、唯、抽象の結果、類型的の形[#「類型的の形」に白丸傍点]を示したものに過ぎませんから、個々の具象的の塲合に於ては此中間の形があつて、三者中の孰れに屬するか分らぬものが多く、又一人の人で、場合によつて、甲の類型に依ることもあれば、乙の類型に依ることもあるといふ樣なことは必ずあるに相違ありませんが、併しながら、個々の具象的の塲合に於て、何れの要素かゞ多量を占め居るとか、又は、人によつて重もに何れ
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