一緒にしたものであつて、プラトーン[#「プラトーン」に傍線]の世界觀などは即ち其一例であります(但しプラトーン[#「プラトーン」に傍線]自身は現實界と實在界とを峻別した結果として第三の禍惡觀を取つては居らぬけれども)。一切の事象は『善』の觀念に規定されて居るといつて初めて歡喜の念を以て[#「歡喜の念を以て」に丸傍点]之に服從せねばならぬといふことが起るのである。此塲合に於ては、實在其物が、デーモクリトス[#「デーモクリトス」に傍線]の原子の樣に瞽盲的のものでなく、又スピノーザ[#「スピノーザ」に傍線]の本体の樣に無色無規定のものでなく、『善』といふ目的論的の着色を帶びて居るのであるから、我々と實在との間に人格的の關係(但し、前に述べた成立宗教の所謂人格的の關係とは異なる)が成立つて、一切の事象を歡喜の情を以て迎へねばならぬといふことが起るのであります。
 次に第二の禍惡觀と契合する世界觀の例を擧ぐれば、ハルトマン[#「ハルトマン」に傍線]氏の世界觀は其適例であります。即ち、宇宙其物が贖罪の過程に於てあるのである。此過程が終局に歸せざる間は禍惡は决して根絶するものではない。夫れで我々は出
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