來るだけ苦を冒[#「冒」に丸傍点]し、禍惡と健鬪[#「健鬪」に丸傍点]し、宇宙の贖罪に出來るだけの貢献をなさなければならん。是れが我々の本務である。苦は苦であるけれども解脱の道行きには避くべからざる嶮路であるから、勇を皷して之を越えねばならぬと言ふのであります。即ち第三とは異なつて、禍惡は飽くまでも禍惡と見て[#「禍惡は飽くまでも禍惡と見て」に丸傍点]、決して禍惡其物を美觀樂觀するものではありません。禍惡としての[#「禍惡としての」に丸傍点]禍惡[#「禍惡」に白丸傍点]を認め、而して此禍惡と戰ひ禍惡を冒すを以て本務と心得ねばならぬといふのであります。
 要するに、第一の禍惡觀は非目的論的によつても立つことが出來るけれども、第二、第三の禍惡觀は目的論的の宇宙觀の上でなければ立つことは出來ぬ。而して、等しく目的論的宇宙觀にしても、第二の禍惡觀は實在の觀念と『美』の觀念とを直接に[#「直接に」に丸傍点]一緒にせずして、實在を進化的[#「進化的」に白丸傍点]、發展的[#「發展的」に白丸傍点]に見たる世界、從つて、一切の事象は其儘美[#「其儘美」に丸傍点]ではないけれども美に對して何等かの旨趣を
前へ 次へ
全18ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
朝永 三十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング