みであつて、將來の文化《クルツール》又は文化人《クルツールメンシュ》に付ては極めて明確の理想を立てゝ居る。
偖て我邦に現はれたる懷疑説は何處まで進んで居るか[#「我邦に現はれたる懷疑説は何處まで進んで居るか」に傍点]。無論懷疑論者の中にも種々の色別があり、程度上の相違はある。從つて一概に言ふ譯には行かぬけれども自然主義者の中で最よく其懷疑的傾向を代表して居ると思はるゝ論者を取て見れば、隨分極度まで進んで居る者がある、即ち、第一に過去及現在の殆んど凡ての哲學、道徳、宗教を排して居る。而して更に進んで、單に過去及現在のみならず、凡ての[#「凡ての」に傍点]哲學上の概念の體系[#「概念の體系」に傍点]を排し、凡ての道徳及宗教上の理想や價値[#「理想や價値」に傍点]を排斥し、隨分徹底したる個人主義、現實主義、刹那主義を主唱して居るのであります。其れから又た其中にはピュローン風な即ち凡てのことに付て中性的の態度を取つて何事も解决しないといふ所に安住するといふ樣な思想もある。又た、「ソフィスト」の樣な、輕佻な青年や俗衆の意に投ぜんとするといふ樣な不眞面目な風格もある樣に思ふ。併し要するに、是等の
前へ
次へ
全29ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
朝永 三十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング