。例えば理学部に入学して物理学を研究しようと志す学生が、物理学とは一体どういう学問であるかを知っている程度に、法学の何たるかを知って法学部に入学してくる学生は、ほとんどないのではあるまいか。さればこそ、法学部が入学試験を行うに当っても、一般に法学的学科を試験科目に加え得ないのであって、このことを考えただけでも、法学部の新入学生に対しては、研究上その入口において、先ず法学の何たるかを十分に教える必要のあることがわかると思う。

       二

 私は今ここに、法学が全体としていかなる学問であり、もしくはあるべきかを説こうとするのではない。また、法学教育上法学のいかなる方面に重きを置くべきであるかを論じようとするのでもない。これらの点については人々によっていろいろ考えがあり、私としてもまた多少の考えを持っているが、ここではその問題に論及せんとするのではない。現在全国の官私立大学において法学教育の名において教えられているものをそのまま与えられた事実として認めつつ、それを基礎として、法学生は一般にいかなる考え、いかなる態度で講義を聴き、また研究すればいいのか、そのことについて私の考えている
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