徹底していないのではないか、学生の多数は彼らの研究する学問の特質を知らず、従ってまた、いかなる態度方法で聴講し、また研究すればいいのかというようなことについて適切な指導を与えられていないのではないか、という疑いを抱かざるを得ないのを甚だ遺憾とするのである。
 元来法学については――他の諸学部と違って――中学や高等学校で予備知識を与えられる機会が少ない。なるほど法制経済とか、公民科とか、法学通論とか、多少法律知識を与えることを目的とする講義が行われてはいるけれども、これらの講義はすべて一般的教養としての法律常識を与えることを目的とするものであって、学問としての法学の何たるかを教えることを目的とするものではない。高等学校の法学通論においては、教授それぞれの考えで、法律常識を与えんとするよりは、むしろ法学的基礎知識を与えることを主眼としていると思われる講義も行われているやに聞いているが、なにぶんにも講義時間が少ないのと教授に専門的法学者を求めることの困難のために、この種の講義を通して、大学の法学教育ではどういうことが教えられているのかを十分学生に呑み込ませることは、できていないように思われる
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