ことの一|斑《ぱん》を、新入学生諸君の参考のために述べてみたいのである。
現在全国官私立の諸大学で与えられている法学教育の内容は、主として法律諸部門に関する所謂解釈法律学的の教育である。無論、法理学のように法律に関する哲学的考察を目的とする講義も行われているし、また法制史のように法律事実学の部門に属するものと考えられる講義も行われている。その他各教授の考え次第によって、解釈法律学的の講義のなかに織りまぜて法律事実学的、もしくは法律社会学的のことを比較的多く教えようとする講義も行われているようであるが、現在実際に与えられている法学教育の大部分は解釈法律学である。個々の教授の意識的に意図するところの如何にかかわらず、また教授方法の如何にかかわらず、実際行われているものは、主として解釈法律学的法学教育である。
このゆえに、新たに法学部に入学して法学教育を受けようとする新入学生としては、その所謂解釈法律学がいかなる学問であり、これに関する講義が何を目的として行われているかを知ることが何よりも大切であって、私は、この点に関する無智もしくは誤解が、適正なる学習の妨げになっていることを多数の事例
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