ものをもとにして、法律を教えるがいい、そうすればひとり学生みずからをして自発的に法律を発見し学ばしめることをうるのみならず、理屈ではとうてい説明のつかない法律の機微を学生に教えこむことができて、いわば一挙両得になります。ですからこれからの法学教育はこういう方向に向かってしかるべきだと私はかたく信じます。

     五 結論

 これでだいたい私のお話は終ったのですが、体裁のために簡単に結論をつけておきたいと思います。
 今まで申しましたところを要約すると、こういうことになります。理知はよろしい、理屈も知恵もよろしかろう。しかしながら小知恵ではだめだ。理知も徹底したのでなければだめだ。これに反して徹底した理知ならば必ず人間らしいものになる。いったい世の中のことは、理知で解きうる範囲は実にきわめて狭いので、少し行けばすぐ突き当るのである。しかし少なくともその理知だけでも徹底するように努力せねばならぬ。それが今の法律学者に対する私の要求の一つである。その次は理知はみずからその身のほどを知れ、理知によって進みうるところは広くはない、人間というものは理知だけで動いているものではない、あるいは信
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