をするについては、従来の単純な資本主義や個人主義の頭脳だけを頼りにしたのでは、うまい法律のできるわけがないのです。それで、この同じ問題が、諸外国においても、わが国におけるよりはむしろ大仕掛けに起こり、これに対する立法も実にたくさんあるのですから、この外国の立法例だけでも十分調査し、また進んでは実際わが国における住宅難がどんなものであるか、またこれに関する法律上の争いは実際上どんなものであるかを、十分調査してかからなければならないわけです。ところが司法省のしたところをみていると、外国の法律を参考した形跡が少しもないのみならず、わが国の実情についてもほとんどなんらの調査もないのです。現在、裁判所に提起される借家に関する事件の統計があるかというとない。例えば借家人のほうから起こす訴訟の数はいったいどのくらいあるか、家主の起こす訴訟はどのくらいあるか、あるいは訴訟の金額はどのくらいか、これらの点を東京区裁判所の管轄区域内だけでもよろしいから知りたいと思ったのですが、そういうものは司法省にはないのです。いったい立法例を調査するでもなく、世の中の実情を調査するでもなく、ただ立案者がありあわせの小知
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