案を立てて議会に提出するのが普通の場合ですが、それからあと議会が何をするかというと、これは全く言語道断で、政府の案なれば御用党の力で理が非でも議会を通過します。反対の少数党中にかなり理屈のあることをいう人もあるのですが、多数党はそのいうことをきいてさえくれません。だから議会は法律の通ったりつかえたりする所で、法律を作る所ではない。法律はむしろ司法省なり内務省なり、その他お役所の役人によって作られるのだといっても、たいした間違いとはなりません。そこで、今日、法律の起草をされる方々はどんな方々かというと、それはそろいもそろって知恵者です。そうして吾輩出ずるにあらずんば天下のこと明らかならずとか、余輩出ずれば天下のこと定まるとかいうようなぐあいに、自分のもっている知恵をえらく尊信して万事がこれで解決できるというように考えている方々のように思われます。ところが私から遠慮なく申しますと、その先生がたがみずからたのむところの知恵が、たとえ、その先生がいかにえらい人であるとしても、はたしてそんなに頼りにできるほどたいしたものであるかどうかを、私は大いに疑うのです。どうせ人間一人ですから、その一つの頭
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