bとして、そのXの中に既知数たる分子を探求することに全力を尽くすべきです。しかも遺憾ながら、人類が今までに知りえた知識によると、X中既知数的分子はまだきわめて少ない。結局においては、なお多大の未知数的分子の残ることを許容せねばならないのです。ですから、そのXをみだりにAやBに置き換えるがごときはきわめて謙遜性を欠いた無謀の企てです。しかもさらばといって、XをXのまま置いたのでは学問になりがたい。なんとかしてそれを既知数化せねばならぬ。それがためにはまずできるかぎりXの中に既知数的分子たるabcdなどを求めねばなりません。しかし、それでもなお跡にはかなり大きな未知数が残るものと覚悟せねばなりません。そうしてその未知数をかりにxとすれば、従来の法学がXを軽々しくAやBに置き換えた代りに、これを([#ここから横組み]a+b+c+d+x[#ここで横組み終わり])なる項にすることができる。むろんこの場合といえどもxの値の決定はこれを裁判官なり陪審官なりに一任することになるのです。したがって、裁判官なり陪審官なりが、いかなる思想を有するかは結局における答えの形成に対してきわめて重要な作用を与えるも
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