また子孫をして「嘘」をつかずに生きることをえしめんがために、「法」を破壊せんと計ります。そうして「法」を固定的なものとして考え、固定的なものとして取り扱わんとする人々の最も恐れている「革命家」は実にこの種の「正直にして勇気ある人々」の中から出るのです。
またそれほど正直でないか、または勇気のない多数の利口者は、「嘘」をついて「法」をくぐろうと計ります。「法」が固定的で、ある事柄が「有」る以上必ず適用されねばならぬようにできている以上、「有」をいつわって「無」という以外「法」の適用を免れる方法はない。「生」を熱愛する人間のこの方法に救いを求める、事や実に当然なりといわねばなりません。「法」を固定的なものとして考え固定的なものとして取り扱わんとする人々はかかる結果を好むのでしょうか? 否、彼らの最も憎みきらうところでなければなりません。しかし彼らがいかに憎みきらっても、「生」を熱愛する人々の「嘘つき」をやめることは事実上不可能です。彼らがこの否むべからざる人生の大事実に気がつかないのだとすれば、それはきわめて愚だといわねばなりません。
大河は洋々として流れる。人間がその河幅を狭めんとし
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