そうなんでね。が、もう止《よ》しときましょう。あなたはイギリス人だ。だからそんなことは別問題です。どうか、ほんのちょっと、そこで待ってて下さい。」
二人に後に下っているようにと諭《さと》すような手振りをしながら、彼は身を屈めて、壁の隙間から覗いて見た。ほどなく再び頭を揚げると、彼は扉《ドア》を二度か三度叩いたが、――それは明かにそこで物音を立てるだけの目的でしたのであった。それと同じ目的で、鍵を扉《ドア》にあてて三四度ずうっと引き、その後で、それを不器用に錠の中へ挿し込み、出来るだけがちゃがちゃさせながらそれを※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]した。
扉《ドア》は彼の手でゆっくりと内側へ開き、彼は室内を覗き込んで何かを言った。すると弱々しい声が何かを答えた。どちら側からもただの一|言《こと》以上はしゃべらなかったに違いない。
彼は肩越しに振り返って、二人に入るようにと手招きした。ロリー氏は自分の片腕を令嬢の腰にしっかりと※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]して、彼女を支えた。彼女がぐったりと倒れかかるように感じたからである。
「こ――こ――これは――事務ですよ、事務
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