、それはさっき酒店で酒を飲んでいたあの同一の名の三人であった。
「わっしはあなた方が訪ねてお出でなすったのにびっくりして、あの連中のことを忘れてましたよ。」とムシュー・ドファルジュは弁明した。「おい、君ら、あっちへ行ってくれ。わしたちはここで用事があるんだから。」
三人の者は傍をすうっと通り抜けて、黙ったまま降りて行った。
その階には他《ほか》に扉《ドア》が一つもないようであったし、自分たちだけになると酒店の主人はその扉《ドア》の方へ真直に歩いてゆくので、ロリー氏は少しむっとして囁き声で彼に尋ねた。――
「君はムシュー・マネットを見世物にしてるのかね?」
「わっしは、選ばれた少数の者に、あなたが御覧になったようなやり方で、あの人を見せるのです。」
「そんなことをしていいものですかな?」
「わっしは[#「わっしは」に傍点]いいと思っています。」
「その少数の者というのはどんな人たちです? 君はその人たちをどうして選ぶのですか?」
「わっしは、わっしと同じ名の者を――ジャークってのがわっしの名ですが――ほんとうの人間として選ぶんです。そういう連中には、あの人を見せてやることはためになり
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