一七七五年の秋から冬へかけてのわずか数日間のこと。場面はイギリスのドーヴァー街道からフランスのパリーへ。「甦る」という暗号文句を標題とし、フランスの一医師が十八年間の獄中の監禁から再び自由の世界へ甦るまでの顛末が語られるに過ぎぬ。この物語における最も主要な人物でさえこの巻ではまだ全然現れていない。〕
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第一章 時代  この章では、作者ディッケンズは、一七七五年すなわちアメリカ独立戦争開始の年でありフランス大革命勃発の十数年前に当る頃におけるイギリス及びフランス両国の政治的及び社会的状態を、陰翳の多い筆で一抹的に描いて、この物語の発端の背景としている。純然たる序言的な章である。
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第二章 駅逓馬車  物語はロンドンからドーヴァーへ通ずる街道から始る。一七七五年十一月末の夜。丘を登るドーヴァー行の駅逓馬車、その傍を歩く一乗客、泥濘の道、馬車を曳く馬、谷々をたちこめるイギリス名物の霧、厚く身をくるんだ乗客たち、馭者と車掌、等、等、――この物語の初めの方は長編の発端らしく悠々としてそ
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