の間を往復する乗合馬車。鉄道の出来る前の主要な交通機関であった。この頃の物語にはよく出て来る。
ターナム・グリーン  ロンドンの西方の郊外にある地名。
喇叭銃  口径の大きな、銃口が漏斗形をした、短い、往時行われた銃。
セント・ジャイルジズ  ロンドンの、本市の西、ウェストミンスターの北東の一地区。貧困と悪行との一中心地として名高かった。
ニューゲート  ロンドンの古くから有名な監獄。旧ロンドン市の西の門のところにあった。一二一八年に創建されて一九〇二年に取毀されるまであったのだから、この作中の時代のみならず、この作者の時代にも存在していたのである。この監獄のことは後にも出て来るが、改善されずに、常によからぬ評判が立てられていた。
ウェストミンスター会館  昔のウェストミンスター宮殿の一部。ここで国事犯に対する審問が行われ、その入口のところで時事問題を論じたパンフレットが焼棄されたのである。
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 〔第二章 駅逓馬車〕
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シューターズ丘  ロンドンの南東八マイルのところにあるかなり高い丘。
ブラックヒース  シューターズ丘とロンドンとの途中にある広濶な公有地。
手綱と鞭と馭者と車掌とが……軍律を読み聞かせた  馭者と車掌とが手綱を曳き鞭で打って馬に先へ歩ませたことである。「放置しておけば、動物の中には理性を賦与されているものもいるという議論に非常に都合のよくなる目論」とは、無論、前文にあるように、馬が自分勝手に路を戻りかけたことをさす。以下、この作にも、このように諧謔作家としてのディッケンズを示す文章や箇処が綿密な読者には処々に認められるであろう。
宿駅  駅逓馬車の継替えの駅馬を繋留してある家。
一クラウン  イギリスの五シリングの銀貨。
半ガロン  一ガロンは約二升五合の液量。
テムプル関門  旧ロンドン市の西、ウェストミンスターとの境界にあった有名な門。後の章でたびたび出る。この物語のテルソン銀行はその傍にあるのである。
もし甦るなんてことが流行って来ようものなら…………  このジェリーの言葉の意味はずっと後になって明かになる。
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 〔第三章 夜の影〕
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忍返し  人の忍んで越え入るのを防ぐために、尖頭を外にして塀や垣や柵壁などの上に打ちつける釘状のもの。ジェリーの髪の毛を忍返しに喩えることは、これから後たびたび用いられる。
蛙跳び  前方に屈んでいる人の背に手をつけてその人の上を跳び越す遊戯。馬跳び。
犂  牛または馬に曳かせて耕す鋤。
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 〔第四章 準備〕
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ロイアル・ジョージ旅館  当時はジョージ三世の治世であり、その名を屋号にした宿屋などが多かった。
カレー  ドーヴァーの対岸にあるフランスの港。
海の駝鳥のように…………  駝鳥は追い詰められると頭だけ砂の中へ隠して見えないつもりでいると言われているので、海から上って頭だけを断崖の中へ突っ込んでいるようなドーヴァーの町を、戯れてその駝鳥に喩えたのであろう。
夜間にぶらぶら歩き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]って…………  対岸のフランスからの密輸入が盛んに行われていたことを暗示するのである。
クラレット  ボルドー産の赤葡萄酒。
死海の果物  生のない果物の意味。彫刻した食べられない果物だからである。この前後の、黒奴のキューピッドも、黒い籠も、黒い女性の神々も、もちろん、皆、鏡の縁の彫刻である。
少し外国訛りがあったが…………  その理由は少し後になって判明する。
ボーヴェー  パリーの北方約四十マイルのところにある都市。カレーからパリーへ行く途にある。
ムシュー  フランス語の「‥‥氏」、「‥‥さん」、「‥‥君」に当る語。本篇では、もちろん、フランス人の名前に附けてある。また、フランス人が紳士に対する呼掛け語としてもこの語を用いる。
書入れしてない書式用紙に…………  当時、フランスの王は御璽で封印した逮捕または拘禁の秘密令状を寵臣貴族たちに与えたのであった。ゆえに、彼等はその令状に誰でも彼等の欲する者の名を書き入れて、その者を裁判なしにただちに投獄することが出来たのである。
九ペンスの九倍は…………  ペンスもギニーもイギリスの貨幣で、十二ペンスが一シリングであり、一ギニーは二十一シリングに当る。
親衛歩兵の……桝目のもの  イギリスの親衛歩兵第一聯隊の兵は大きなバケツ型の毛皮の帽子をかぶっている。それを「桝」に喩えて滑稽に言ったのであろう。
スティルトン乾酪  もとイングランドのスティルトン村で造り始めた上等のチーズ。
嗅塩と……酢と  嗅塩は婦人などに
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