陰気な食事を済ました。そこにあった新聞をすっかり読んでしまって、あとは退屈凌ぎに銀行の通帳をいじくっていたが、やがて寝に帰った。彼はかつて死んだ仲間の所有であった部屋に住っていた。それは中庭の突き当りの陰気な一構えの建物の中にある薄暗い一組の室であった。この建物は、少年の頃に他の家々と一緒に隠れん坊の遊びをしながら、そこへ走り込んだまま、元の出口を忘れてしまったものに違いないと想像せずにはいられなかったほど、ここにある必要のないものであった。今はすっかり古びて、随分物凄いものになっていた。何しろ他の室は皆事務所に貸してあって、スクルージの外には誰も住んで居ないのだから。中庭は真暗で、その石の一つ一つをも知っている筈のスクルージですら、已むを得ず手探りで這入って行った位であった。霧と霜とは、その家の真黒な古い玄関の辺りにまごまごしていたが、ちょうどそれは天気の神がじっと悲しげに考え込みながら、閾の上に坐っているのかと思われる位であった。
 ところで、入口の戸敲きには、それは非常に大きなものであったと云う外に、別段変ったことはなかった。それは事実である。またスクルージは、そこに住っている間
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