めに半クラウンを差引こうと云い出したら、君は酷い目に遭ったと思うだろう、きっとそうだろうな!」
 書記は微かに笑った。
「しかもだ」と、スクルージは云った、「君の方じゃ仕事もしないのに一日の給料を払わせられる俺を酷い目に遭わせたとは考えないのだ。」
 書記は一年にたった一度のことだと云った。
「毎年十二月二十五日に人の懐中物を掏《す》り取るにしちゃ、まずい言い訳だ」と、スクルージは大きな外套の顎までボタンを掛けながら云った。「だが、どうしたって丸一日休まずには置かないのだろう。明くる朝はその代りに一層早く出て来なさいよ。」
 書記はそうしましょうと云うことを約束した。スクルージはぶつぶつ云いながら出て行った。事務所は瞬く間に閉じられてしまった。そして、書記は白い襟巻の長い両端を腰の下でぶらぶらさせながら、(と云うのは彼は外套を持っていなかったからで。)聖降誕祭前夜のお祝いに、子供達の列の端に附いて、コーンヒルの大通りの氷った辷り易い道の上を幾度となく往復した。それから目隠し遊びをしようと思って、全速力でカムデン・タウンの自宅へ駆け出して行った。
 スクルージは行きつけの陰気な居酒屋で、
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