、朝に晩にそれを見ていたと云うことも事実である。またスクルージは、倫敦《ロンドン》市民の何人《だれ》とも、市の行政団体、市参事会、組合員などを引っ包めても――引っ包めてもと云うのは少し大胆だが、倫敦市中の何人《だれ》とも同じように、所謂想像力なるものを余り持っていなかったと云うことも事実その通りである。またスクルージは、この日の午後七年前に死んだ仲間のことを口にした切りで、それ以来少しもマアレイの上に思いを致さなかったと云うことも心に留めて置いて貰いたい。で、そうした上で、スクルージが、戸の錠前に鍵を押し込んでから、それがいつの間にどうして変ったと云うこともないのに、その戸敲きを戸敲きと見ないで、マアレイの顔と見たと云うことは、一体どうしたことであろうか、それを説明の出来る人があったら、誰でもいいから説明して貰いたい。
マアレイの顔。それは中庭にある外の物体のように、見透かせない闇の中にあるのではなく、真暗なあなぐらの中にある腐敗した海老のように、気味の悪い光を身の周りに持っていた。それは怒ってもいなければ、猛々しい顔でもない。その昔マアレイが物を見る時の容子そっくりの容子をして、す
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