難う御座います。幾重にもお礼を申上げますよ。それではお静かに!」
 彼は教会へ出掛けた。それから街々を歩き廻りながら、あちこちと忙しそうにしている人々を眺めたり、子供の頭を撫でたり、乞食に物を問い掛けたり、家々の台所を覗き込んだり、窓を見上げたりした。そして、何を見ても何をしても愉快になるものだと云うことを発見した。彼はこれまで散歩なぞが――いや、どんな事でもこんなに自分を幸福にしてくれることが出来ようとは夢にも想わなかった。午後になって、彼は歩みを甥の家に向けた。
 彼は近づいて戸を敲くだけの勇気を出す前に、何度も戸口を通り越したものだ。が、勇を鼓してとうとうそれをやっ附けた。
「御主人は御在宅かな」と、スクルージは出て来た娘に云った。好い娘だ! 本当に。
「いらっしゃいます。」
「どこにおいでかね」と、スクルージは訊いた。
「食堂にいらっしゃいます、奥様と御一緒に。それでは、お二階に御案内申しましょう。」
「有難うよ。御主人は俺《わし》を知ってだから」と、スクルージはもう食堂の錠の上に片手を懸けながら云った。「すぐにこの中に這入って行くよ、ねえ。」
 彼はそっとそれを廻わした。そし
前へ 次へ
全184ページ中176ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ディケンズ チャールズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング