ある。
 ところで、読者にして若しかく親しい集会に出掛けて行く人数から判断したとすれば、どの家も仲間を待ち設けたり、煙突の半分までも石炭の火を積み上げたりしてはいないで、折角お客様がそこへ着いても、一人も自宅にいて出迎えてくれる者はないだろうと思われるかも知れない。どの家にも祝福あれや! いかに精霊は欣喜雀躍したことぞ! いかにその胸幅を露《む》き出しにして、大きな掌をひろげたことぞ! そして、手のとどく限りあらゆる物の上に、その晴れやかで無害な快楽をその慈悲深い手で振り撒きながら、ふわふわと登って行ったことぞ! 灯火の斑点で黄昏時の薄暗い街にポツポツ点を打ちながら駆けて行く点灯夫ですら、今宵をどこかで過すために好い着物に代えていたが、その点灯夫ですら精霊が通りかかった時には声を立てて笑ったものだ――聖降誕祭の外に自分の伴侶があろうとは夢にも知らなかったけれども。
 ところで、今や精霊から一言の警告もなかったのに、突然二人は冬枯れた物寂しい沼地の上に立った。そこには巨人の埋葬地ででもあったかのように、荒い石の怖ろしく大きな塊がそちこちに転っていた。水は心のままにどこへでも流れ拡がってい
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