た。いや、結氷が水を幽閉して置かなかったら、きっとそうしていたであろう。苔とはりえにしだ[#「はりえにしだ」に傍点]と、粗い毒々しい雑草の外には何も生えていなかった。西の方に低く夕陽が一筋火のように真赤な線を残して消えてしまった。それが一瞬間荒漠たる四辺の風物の上に、陰惨な眼のようにあかあかとぎらついていたが、だんだん低く、低くその眼を顰めながら、やがて真暗な夜の濃い暗闇の中に見えなくなってしまった。
「ここはどう云う所で御座いますか」と、スクルージは訊ねた。
「鉱夫どもの住んでいるところだよ、彼等は地の底で働いているのだ」と、精霊は返辞をした。「だが、彼等は俺を知っているよ、御覧!」
一軒の小屋の窓から灯火が射していた。そして、それを目懸けて二人は足早に進んで行った。泥土や石の壁を突き抜けて、真赤な火の周りに集っている愉快そうな一団の人々を見附けた。非常に年を取った爺と媼とが、その子供達や、孫達や、それからまたその下の曾孫達と一緒に、祭日の晴着に美々しく飾り立てていた。その爺は不毛の荒地をたけり狂う風の音にとかく消圧《けお》されがちな声で、一同の者に聖降誕祭の歌を唄ってやっていた。
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